ENG RESEARCH PEOPLE HOME
Ohnishi Lab.

知能メディア工学講座 研究紹介



研究内容
人間は,見る,聞く,言葉を理解するという重要な情報処理を行なっています.
これらの情報処理の仕組みを理解するためのモデル化(生体情報処理)と,人間の優れた機能に学ぶと同時にユニークなアイディアに基づく視聴覚情報処理の計算機による工学的な実現 (コンピュータ・ビジョンコンピュータ・オーディション自然言語処理),さらに視聴覚機能を代替あるいは支援する福祉機器(福祉工学)の研究をしています.
生体情報処理
人間に代表される生体は参考にすべきいろいろな特徴を持っています
  1. 見る,聞く,触るなどの優れた知覚,
  2. 環境へ適応するための自己組織化(学習),
  3. 多種類の感覚情報の統合,
  4. 行動と連係した能動的かつ目的意識的な観察,
  5. 発話,理解,問題解決などの高次機能
などがあります.
これらの生体系の特長を解析し,モデル化することは,科学としての真理の 探究だけでなく,生体の機能を工学的に実現するのに貢献します.
そこで,生理学・心理学の知見や,独自に実施した心理実験に基づいて, 視聴覚情報処理のモデル化やシミュレーションを行っています.

研究テーマ
  • 透明性の知覚
  • 主観的輪郭
  • 両眼注視点の解析
  • この研究では、実際に、物体を観察している時の注視位置を計測することにより、視覚情報取り込みから空間認識過程、注視位置決定の機構について明らかにすることを目指しています。

コンピュータ・ビジョン
 私たちは非常に多くの情報を得ていますが,その約7割が視覚を通しての ものです.新聞や本に書かれた文字や図の認識だけでなく,歩行・運転・ス ポーツなどの動作を適切にするための周囲環境の認識など,視覚は大変重要です. 人間のもつ素晴らしい視覚機能を,カメラと計算機などを用いて,ロボットの眼と して工学的に実現するための研究をしています.
現在は,下記のように,2次元の画像からの3次元世界の復元,視覚による シーンの認識・理解,ヒューマンインタフェースのためのビジュアルセンシング などの手法を研究しています.

研究テーマ
  • 移動物体の検出・追跡
  • 移動する物体を,カメラを回転することによって視野の中央にとらえます.
  • 映り込みと実物体の分離
  • 視線検出
  • シーン中の文字領域の抽出
  • 姿勢推定
  • 文字認識
  • 文字の回転や大きさの変動にロバストな常用手書き数字認識を研究しました.Complex-log mappingとフーリエ変換により,入力画像を回転や拡大・縮小に対して不変な画像に変換し,これを3層ニューラルネットへの入力として学習・認識を行います.
  • 仮想カメラでとらえたサッカー動画像
  • 放送されたTV画像を解析し,プレイ中の選手から見たシーンを動画像で生成するシステムを開発しています.
  • 部分複写の検出
  • 部分複写という画像の改ざんを検出します.
    複写領域の回転や反転,スケーリングなどの変形にも対応します.

コンピュータ・オーディション
 視覚を通して私達は非常に多くの情報を得ていますが,聴覚も重要で, 視覚にはない長所があります.聴覚は,無指向性で,暗闇でも働き, 物陰あるいは別の部屋の音源の存在を知ることができます.また, 時間分解能も高く,必要な計算量も少なく,高速なシーンの理解が可能です. そして,背後で物音がした時に振り向くというように,環境の変化の初期知覚と いう,重要な役割もあります.
聴覚により,どんな音(what)が,どこから聞こえ(where),そしてその音は どんな状態(how)で,さらに音が人の声なら,何を言っていて,さらに どんな感情がこめられているかを知ることができます.
現在,聴覚によるシーンの理解として,複数音源の定位,および分離・識別, さらに高度な処理としての音声に基づく感性情報処理を研究しています.

研究テーマ
  • 音源定位・分離
  • 複数のマイクロホンの信号処理により,各音源の観測系から見た方位を推定し,さらに,方位情報などを手がかりにし,複数の音が混じったマイク信号から,個々の音を分離します.
  • エコーキャンセラー
  • 単一のマイクロホンで採取したエコーを含んだ音響信号のみから,エコーを除去する方法を考案しました.エコーの遅れ時間はケプストラムで,振幅比は復元された元信号長の最小化により推定します.
  • 音源定位ロボット
  • このロボットは,音がした方向を推定し,その方向へ障害物を避けながら接近することができます.音源が物陰などにあり見えなくても,回折音により近似的な音源の方位を推定します.
  • 音声からの感情抽出(感性情報処理)
  • 警告音の識別

自然言語処理
 自然言語とは,我々が日頃何気なくコミュニケーションの手段として用いてい る言葉のことです.現在,我々の日常生活のなかには,新聞,雑誌,テレビなど, 様々な情報媒体がありますが,それらにおいて言葉は非常に重要な役割を果たし ており,言葉がなければ,これらの情報媒体は成り立たないといっても過言では ありません.言葉に関してもう一つ重要なことは,それが我々人間の思考の手段 になっていることです.もしかすると,こちらの方がむしろ言葉の本質かもしれ ません。いずれにせよ言葉が我々人間と切っても切れない関係にあることは,間 違いありません.
自然言語処理は,このような重要な役割を果たしている言葉を計算機に理解, あるいは何らかの処理をさせることにより,我々人間の社会生活に役立てようと するものです.現在は以下のような研究をしています.

研究テーマ
  • 照応解決
  • 照応とは,代名詞、指示詞等(照応語)とその指示対象(先行詞)との組によって表される言語現象のことです.照応語自体には語彙的な意味がないために,計算機で言語を処理する場合には,文中の照応語が何を指しているのかを明らか にしなければなりません.その手法を研究・開発しました.
  • アブストラクト評価
  • 論文などの冒頭に書かれている概要(アブストラクト)は,論文の内容を迅速に知るために重要です.アブストラクトにはどのような内容を書くべきか,またそういった内容が記載されているかをどのようにしてチェックするか,について,文の意味役割という観点から研究しています.
  • 未登録語の品詞・意味推定
  • 言葉は日々変遷していますから,文中には辞書に記載されていない語句(未登録語)が当たり前のように出てきます.このような場合,それらの品詞や意味をどのようにして処理するかについて研究しました.

福祉工学
 私達人間の基本機能は,見る,聞く,話す,動かすです.これらの機能により 情報を表現し,他の人あるいは機器さらには外界とコミュニケーションしています. しかし,疾病あるいは事故のため不幸にしてこれらの機能を失った人は少なく ありません.私たちは,視聴覚に障害がある人の生活・勉学・就労を支援する ため,福祉機器の研究を行っています.福祉機器の研究は,健常者用機器の それよりもはるかに困難ですが,魅力的なテーマや技術的課題の宝庫で, ここで生まれた技術やアイデアが一般機器の研究・開発へ応用される 可能性もあります.

研究テーマ



Last Update: Sun Apr 19 16:14:58 1998