研究紹介(安藤真也)


研究題目:聴覚障害者のための警告音識別



<背景と目的>
聴覚障害者は音源識別が困難であるために,日常生活の様々な場面 で不自由を感じている.そこで,本研究では聴覚障害者のために環境音の 中から警告音を識別するシステムの研究開発を行う.従来,この研究は多変量 解析の手法により行われてきたが,雑音環境での識別率の低下などの問題が あった.この問題を解決するために,従来の研究では1時点のみで音源識別 を行っていたものを,本研究では時間による周波数の特徴の変化情報を用いて識 別を行うように改善した.

<音源識別処理>
本研究での音源識別処理の概要は次のようである.あらかじめサンプル音を 用いて固有空間と隠れマルコフモデルを作成しておき,その後入力音識別を行う. マイクロフォンより入力される環境音に対し,0.03秒間以上連続して閾値以上の レベルの音が鳴ったら入力音識別処理を開始する.まず音のサンプリングと平行 して,入力音を短時間FFTなどの前処理を行うことにより周波数情報に変換し,そ れを固有空間に投影することにより特徴抽出する.つぎに,オフセットとなるかま たは識別を開始してから3秒間経過したら,それまでに抽出された特徴の時系列デー タを隠れマルコフモデルに入力することにより,入力音が各識別対象音源である確率 をそれぞれ計算する.そして最も高い確率を示した音源の確率が,一般の様々な音で 作られた"一般的な音"に対応する隠れマルコフモデルの確率より相対的に求められた 閾値以上であるなら,入力音は最も高い確率を示した音源であると判定する.閾値以 下なら入力音は識別対象音源以外の音であったとする.最後に,その識別結果を画面 表示により出力し使用者に伝える.

<実験>
以上のシステムを計算機に実装し,6種類の警告音(サイレン,非常ベル,警笛, 踏切,クラクション,救急車)を識別対象 音源として実験を行った.その結果,雑音のない環境では97%,−10dBの雑音環境に おいても94%の識別率を得ることができた.

<発表実績>
2000.9 電気関係学会東海支部連合大会
2001.9 電子情報通信学会ソサイエティ大会
2002.3 電子情報通信学会応用音響研究会(発表予定)